経理コラム
【経理コラム】インボイス制度 開始に向けてのポイントを解説 後編
2023.8.17
本前編ではインボイス制度とは、とインボイス制度の対象者についてお話してきました今回はインボイス制度について押さえておくべきポイントについてお話していきます。ぜひ今後の対策のためお読みいただければと思います。
3. 制度について押さえておくべきポイント
ここでは、いくつかの項目に分けて押さえておくべきポイントについて解説します。
① いつまでに登録申請するべきか
前編でも触れておりますが、制度開始は2023年10月からですが、開始と同時にインボイスを発行する場合は、登録申請を「2023年9月30日」までに済ませておく必要があります。登録申請方法は申請書作成後、郵送か窓口へ持参し提出するか、e-Taxによる電子申請にて行うことができます。
郵送の場合は各都道府県ごとのインボイス登録センター宛に、持参の際は管轄の税務署へ提出することになります。
② 【売り手側】請求書や領収書に記載すべき事項
インボイスに対応するためには、請求書等に一定の事項を記載する必要があります。必要記載事項については以下の6つです。
・適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
・取引年月日
・取引内容(軽減税率が適用される場合は適用対象品目である旨)
・税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜きか税込みどちらでも可)及び適用税率
・税率ごとに区分した消費税額
・書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
様式については法令等で定められておりませんので、上記6つの必須事項が記載されているものであれば、手書きや電子データによる発行が可能です。
③ 【売り手側】守るべき義務
インボイスを発行する際、②で触れた記載事項と併せて以下4つの義務を守る必要があります。
・インボイスの交付義務
課税事業者である取引相手の求めに応じてインボイスを交付する義務
・返還インボイスの交付義務
値引き対応など代金を返還した場合、返還インボイスを交付する義務
・修正インボイスの交付義務
交付済みのものに誤りがあり、後から修正する場合は修正インボイスを交付する義務
・交付済みインボイスの保存義務
交付したインボイス(返還や修正分を含む)の写しを保存する義務
ただし、以下のようなインボイスを交付することが難しい取引の場合は、交付義務が免除されます。
・卸売り市場にて行う生鮮食料品等の譲渡
・農協や漁協にて行う農林水産物の譲渡
・郵便切手を対価とする郵便サービス
・3万円未満の航空機を除く公共交通機関により旅客の運送
・3万円未満の自動販売機による販売
④ 【買い手側】帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められるケース
③でインボイス交付義務が免除される5つの取引はインボイスが交付されないため、もちろん仕入税額控除の適用のためのインボイス保存は不要です。その場合は一定事項を帳簿へ記載しておけば仕入税額控除が認められます。また、売り手側ではインボイス交付義務は免除されないが、買い手側は帳簿保存のみで仕入税額控除が認められる取引もありますので、どのような取引なのか、以下記載します。
・従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費や通勤手当等
・古物商、質屋、不動産宅建業者が適格請求書発行事業者以外から棚卸資産として得る取引
・切符や入場券など回収されてしまうもの
⑤ インボイスに対応できるシステムが導入されているか
まず売り手側では、インボイス発行時に必須記載事項が新たに設けられることになりますが、既存システムでこれに対応できるかが重要となってきます。対応できないということでしたら、インボイス発行のために、新たなシステムを入れ替えるといった対応が必要となります。システム入替となると大掛かりになることもありますので、直前にバタバタすることが無いよう注意してください。
また買い手側も場合によってはシステムに対応しておく必要があります。インボイス制度開始に合わせて、発行側が請求書を紙から電子へ変更する場合も考えられますが、2024年1月には「改正電子帳簿保存法」の2年間の猶予期間が終了するため、今後は電子やメールで受領した請求書や領収書は電子のまま保存しなくてはいけなくなります。今までは電子で受領しても紙に出力してファイリングして保存することが認められておりましたが、今後は電子で受領したものは電子のまま保存しておけるよう社内での仕組み作りや、場合によっては新システムを導入しておく必要があります。
電子帳簿保存法についても、以前に別コラムで取り上げておりますので併せてご確認ください。
まとめ
どの会社でも、基本的には売り手側にも買い手側にもまわることになると思いますので、それぞれで適した準備が必要ですし、対応すべきことが多くあるということがお分かりいただけたかと思います。しっかりとした準備や対応が取れていないと、取引先に迷惑をかけてしまうことも考えられますし、免税事業者の場合、最悪は取引を解除されてしまうという事も考えられます。課税事業者の方で登録申請済みの方は制度開始に向けて準備が進んでいるか今一度確認する、登録申請がまだの方は、まずは登録申請に向けて準備を進めてみてください。また免税事業者の方は課税事業者になるのか、または免税事業者のままでいるか、取引先等を考慮したうえで検討してみてください。
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※ 当コラムに記載の情報を利用するに当たっては、個々の企業様の状況により内容は異なる場合がありますので、顧問税理士様や最寄りの税務署にご確認頂くようお願いいたします。